仏教が「仏になる」ための教えであるなばら、陽明学の心は「聖賢の人になる」ための教えです。
陽明学とは、心を統治・練磨することの大切さを主張した教えであり、万物一体の考え方を理解し、心の中の葛藤を無くして不動心を確立する学問です。
知識や情報を増やすだけでなく、心に生じる歪みや欲を減らす努力がその葛藤をなくし、本来心に備わっている聖賢の知を回復して人間性を高める手段であることを説いています。
1.心即理 (心こそ万事万物の原理)
心というものは、その姿は虚で何もないが、霊妙な働きを持っていて、万事万物の理が
すべてそこに備わっている。
心は、あらゆるものがそこから出てくる源泉であるため、心の外に理があるはずがなく、
心の外に事があるはずもない。
2.知行合一 (知識と行動はもともと一つである)
如何に尊いと言われた教えであっても、学ぶ側の心が納得できなければ、身体がついて
いかない。
知識をどんなに詰め込んでみても、心を無視しては人間性を育む事はできない。
3.致良知 (良知を発揮せよ)
私と私でないものとのギャップを解消し、心の葛藤をなくして、不動心を確立するために
すること。
良知を致すこと、誠を尽くすこととは、決して自分に嘘をつかないこと。
嘘をつくと、本音と建前、言葉と行動の分離、外の世界と内なる心の世界の不一致が生じる。
人間に裏表があるとやがて無力感にとらわれ、生きる喜びが味わえなくなってしまう。
4.殺身成仁
正義の主張のためには、利害だけではなく、生死をも越えるべきだということ。
「殺身成仁」的境地とは、死への恐怖を克服し、不動心を確立した境地のことである。
王陽明は、「誠」や「仁」(友愛、道義、正義)が、生死の問題よりも優先すると説いた。
5.心の健康
人は日々心の掃除や洗濯に努めなければ、心の輝きを失い、曇ったり病気になってしまう。
心の浄化が、自然環境や人間社会の浄化につながっていくと説いた。
6.仁・義・礼・智
仁 惻隠の心、すなわち他人の不幸をあわれみいたむ同情心。
義 羞悪の心、すなわち悪を恥じ、憎む正義感。
礼 恭敬の心、すなわち長者をつつしみ敬う尊敬心。
智 是非の心、すなわち善悪を見分ける判断力。
7.抜本塞源
心の奥底にある「良知」の存在を唱え、社会問題は心の問題であると説いた。
従って、悪を根本から取り除かねばならない。
8.四句教
・善無く悪無きは心の体
心の本体と言うものは善悪を超越したものである。
・善有り悪有るは意の動
善と悪が生じるのは人間の意志が動くからである。
・善を知り悪を知るはこれ良知
善悪を識別する良心的作用は良知である。
・善を為し悪を去るはこれ格物
善を行ない悪を退けること、天理を存して人欲を去ることが格物である。
これらを区別することのない考え方が肝要である。(格物致知)
ひとりひとりが自らの足で立ち、考え、行動することが、これからの時代に求められた大事です。
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